住宅ローンのつなぎ融資とは
つなぎ融資とは、「住宅ローンの融資が実行される前に利用できるローン」です。
実は、家を購入する際、住宅ローンの融資実行前にまとまったお金が必要になる時があるのです。
この時多くの方が利用するのが「つなぎ融資」というものになります。
ここでは、住宅ローン融資前にお金が必要になるのはどんな場合なのか、なぜ住宅ローンだけでは対応できないのかなど、つなぎ融資に関する様々な疑問を解消させていきたいと思います。
また、つなぎ融資の仕組みについても詳しく見ていきましょう。
つなぎ融資を利用するのはどんな場合?
つなぎ融資が必要になるのは、注文住宅を購入する場合になります。
注文住宅の場合、中古物件や建売住宅等を購入する際の流れと違ってくるからです。
中古物件や建売住宅を購入するかを決めるのは、物件が完成した後ですね。出来上がった物件を見て購入するかどうかを決め、購入する場合に住宅ローンを組み、融資実行され、そのお金で物件の支払いを済ませ・・・という流れになっていきます。
しかし、注文住宅の場合は、工事に入る前に購入を決め契約を行います。物件が完成する前に購入というスタイルです。
この場合、建物が完成する前から段階を追って以下のようなお金を支払わなければならないことがあるのです。
・着工時(工事に取り掛かる時)の着工金
・上棟時(棟木を取り付ける時)の中間金
・竣工時(工事が完了した時)の竣工金
支払う金額もその業者によって違い、工事費用の10%程度でいい場合もあれば、30%~40%程度請求されることもあります。
工事費用が3000万円だとしたらその30%となると900万円ですね。この金額を数回に分けて支払うとなると、2回で1800万円です。
預貯金で賄うには少し大きな金額になりますね。
では、住宅ローンの融資実行日を早めてしまえばいいのでは?と思うかもしれませんが、たいていの金融機関では、それができないのです。
それは、住宅ローンというのは、建物が完成してから融資するというのが基本スタイルだからです。
そこで、住宅ローンが融資されるまでの間、「つなぎ融資」に頼ることになるのです。
「つなぎ融資」を利用すると、住宅ローンが実際に融資されるまでの間、一時的に必要なお金を借りることが出来ます。土地代金も含めて借りることが出来る場合もあるので、安心ですね。
住宅ローン融資のタイミング
住宅ローンの融資が早まれば、つなぎ融資を利用しなくても手続きを進めることができますね。
しかし、住宅ローンは建物が完成してからの融資となります。
それはなぜなのでしょう?
それは、建物の完成前は、抵当権の設定登記ができないからです。
抵当権設定登記というのは、「金融機関がその建物と土地を担保にお金を貸しています。支払えなかった場合は金融機関が土地も建物も取り上げる権利があります」ということを示すものになります。
住宅ローンというのは、その土地と建物を担保にする代わりに低金利でお金を貸してもらうという仕組みになっていますね。ですから、きちんと担保として成立していることを登記していない段階で、金融機関が先にお金を貸し出すということができないのです。
では、早い段階で抵当権設定登記をしてしまえばいいのでは?と思うかもしれませんが、抵当権設定登記は、所有権保存登記をしてからでなくては出来ないのです。
しかし、所有権保存登記というのは、「この土地と建物はこの人のものですよ」と示すためのものですから、建物が出来上がっていない段階ではできません。
つまり、住宅ローンというのは、建物を完成を待ち、その持ち主が誰なのかを示す所有権保存登記をして、担保となる土地と建物に抵当権設定登記をして、初めて融資実行という形をとることができるのです。
中古住宅や建売などの場合、建物はすでに完成しているので、この流れでも問題はないでしょう。
しかし、注文住宅を購入する際は、建物完成前に支払うべきお金があるため、困りますね。
そこで、つなぎ融資が必要となってくるのです。
つなぎ融資の仕組み
では、つなぎ融資の仕組みや手続の流れなどについて、詳しく見ていきましょう。
つなぎ融資を申し込む場所
つなぎ融資は、原則として住宅ローンを組む予定の金融機関へ申し込むことになります。
住宅ローンを組む段階で、つなぎ融資が必要かどうかということはわかっているはずなので、必要だと判断される場合は「つなぎ融資を行ってくれる金融機関」を探しましょう。
本来住宅ローンというのは金利や利便性等を考えながら決めるものではあるのですが、つなぎ融資はどの金融機関でも行っているものではありません。
ですから、住宅ローンを組みたい銀行があったとしても、そこでつなぎ融資を行っていなければ意味がないのです。
選択肢が狭まってしまいますが、つなぎ融資を行ってくれる金融機関を見つけたら、その中から住宅ローンを申し込むべき金融機関を選ぶようにしましょう。
また、つなぎ融資の条件や金利なども金融機関によって違ってくるので、なるべく有利になるような金融機関を選べるといいですね。
つなぎ融資の流れ
大まかに見ると、つなぎ融資を利用した場合のお金の流れは、次のようになります。
②金融機関で、住宅ローンとつなぎ融資の申し込みを同時に行う。
③つなぎ融資の融資金で土地代の支払いを済ませる。
④建物の工事請負契約
⑤つなぎ融資の融資金で着工金の支払いを済ませる。
⑥工事開始
⑦つなぎ融資の融資金で中間金の支払いを済ませる。
⑧住宅完成
⑨所有権保存登記・抵当権設定登記
⑩住宅ローン融資実行
⑪住宅ローンの融資金で工事費の支払いを済ませる。
⑫住宅ローンの融資金でつなぎ融資を完済。
つなぎ融資の条件
例として、楽天銀行でフラット35の申し込みをした場合の、つなぎ融資の条件について見ていきましょう。
申し込み条件 | 楽天銀行のフラット35に申し込み、承認を取得した方 |
融資金額 | 500万円以上で、フラット35の承認金額を超えないこと (土地代金)売買契約金額の100%以内 (着工金)建築請負契約金額の30%以内 (中間金)建築請負契約金額の60%以内 |
融資期間 | つなぎ融資1回目の実行日から12か月以内、フラット35融資実行時まで |
金利 | 2.63% |
遅延損害金 | 14% |
返済方法 | 元金・・・フラット35実行金額から差し引き 利息・・・つなぎ融資実行の都度、融資金額から差し引き |
融資形態 | 証書貸付 |
融資事務手数料 | 108,000円(税込み) |
担保 | 融資対象物件の土地に抵当権設定仮登記 |
保証人 | 不要 |
これは楽天銀行のフラット35の場合ですので、他の金融機関のつなぎ融資利用の場合はまた条件が違ってきますが、このような仕組みとなっているので参考にしてみてください。
つなぎ融資のメリット
つなぎ融資を利用する場合のメリットについて見ていきましょう。
①自己資金がなくても、注文住宅を購入することができる
つなぎ融資を利用できれば、住宅ローン実行前に工務店への必要な支払いを済ますことができるので、自己資金を用意していなくても、注文住宅を購入することができます。
あきらめて中古物件や建売住宅にする必要はないので、嬉しいですね。(ただし、つなぎ融資の実行の際、手数料と利息分は差し引かれてしまうことがあるので、手数料・利息分くらいの資金は用意しなければならない場合もあります)
②先に支払うのは手数料と利息分だけ
つなぎ融資を利用しても、ローンの返済がスタートするわけではありません。
もし返済がスタートされてしまうと、今住んでいる家の家賃とローン返済額が重なってしまうので、建物が完成して住めるようになるまで、月々の支払いが苦しくなってしまう危険性がありますね。
しかし、つなぎ融資の場合は、融資実行されてもローンが開始するわけではないので、月々の返済はありません。金融機関によっては、かかった手数料と利息分を先にまとめて支払う必要がありますが、2件分の家賃支払いに悩まされることがないので安心です。
つなぎ融資のデメリット
つなぎ融資は、着工金や中間金を用意するのが難しい方にとって、とても助かるシステムではあるのですが、以下のようなデメリット部分も多くなっています。
①コストがかかる
金利は住宅ローンより高くなっていて、どの金融機関でも、2~4%程度と言われています。そして利息は日割り計算となるので、借りる期間が長くなればなるほど、払う利息も増えていきます。
さらに10万円以上の事務手数料もかかりますし、融資金を振り込む際の振り込み手数料もかかってきます。
借入額に応じて以下のような印紙代も必要になってきます。
<印紙代>
100万~500万以下 | 2,000円 |
500万~1,000万円以下 | 10,000円 |
1,000万円~5,000万円以下 | 20,000円 |
5,000万円~1億円以下 | 60,000円 |
これらの諸費用と金利を合わせると約20万円程度かそれ以上かかってしまうのです。もちろん、自己資金を用意できない場合や、どうしても高額な中間金が必要になってしまう場合は利用せざるを得ないのですが、こんなに諸費用をかけるくらいなら、できれば利用しない方法を考えたいものですね。
②利息や手数料は先に差し引かれる
つなぎ融資の場合、利息や手数料分は融資金から差し引かれて振り込まれることが多いです。もし利息と手数料が15万円だったとして、融資金が1000万円だった場合、985万円が振込額となるのです。
この場合、足りない分(15万円)は自己資金で賄わなければなりません。
ただし、利息や手数料も含めて、住宅ローン融資実行時に一括で差し引いてくれる金融機関もあるので、自己資金の用意が難しい場合は金融機関に相談してみるといいでしょう。
③工事が長引くと利息も増える
工事の完成が予定よりも遅れてしまうこともあるでしょう。すると、住宅ローンの融資実行日も工事に合わせて遅くなってしまう場合もあります。
こうなると、つなぎ融資を利用する期間も伸びてしまいますね。
つなぎ融資の利息は日割り計算になるため、工事が長引き借り入れ期間も延びてしまうと、追加で利息分を請求されてしまいます。
さらに、事務手数料も追加で必要となる場合もあります。
すると、さらなる自己資金が必要となってしまいます。
④つなぎ融資はどこでも行っているわけではない
つなぎ融資はどの金融機関でも行っているわけではありません。
更につなぎ融資を利用する金融機関で住宅ローンを組むのが望ましいため、つなぎ融資を利用する場合は、「自分が利用しやすく金利が低い金融機関」などと選ぶことが出来なくなってしまいます。
「つなぎ融資を行っていて、審査に通過できる金融機関」を選ばなければならないのです。
すると、金利が高かったり、店舗が自宅から遠かったりなど、不都合があっても我慢しなければならなくなります。
つなぎ融資を利用しない方法
便利ではあるもののコストや手間のかかるつなぎ融資。出来れば、利用せずに済ませたいものですね。
そこで、つなぎ融資を利用せずに注文住宅を購入する方法についても見ていきましょう。
①自己資金を用意する
一番いいのは、やはり自己資金を用意しておくことになります。自己資金で賄うことができれば、コストや手間も省くことができ、つなぎ融資を利用せずにスムーズな手続きとなりますね。
ただし、1,000万円を超える額になってくると、用意するのは難しいものです。土地代や着工金、中間金も全て自己資金で賄うと考えると、あまり現実的ではないかもしれませんね。
②住宅ローンを分割融資してもらう
一部の金融機関では、住宅ローンを分割で融資してくれることがあります。分割融資が可能であれば、つなぎ融資を利用する必要がありませんね。
ただし、つなぎ融資の場合は、手数料や利息分を先に差し引かれて融資された後、返済は住宅ローンが融資されてからになるため、月々の返済はないのですが、住宅ローン分割融資になってしまうと、最初に融資された段階から住宅ローンの返済が開始されてしまいます。
建物が完成するまでの間、別の場所に住むことなると思うのですが、その家賃と住宅ローンの返済をダブルで支払っていかなければならないため、一時的に支払いが困難になってしまう危険性もあります。
毎月家賃を2件分支払うようなものですので、月々に余裕がないと難しいですね。
また、分割融資をしてもらうたびに契約が必要となることもあります。するとその都度来店し手続きしなければなりませんし、契約の度に手数料が必要となることもあります。
登記費用が割高となってしまうこともあるでしょう。
つなぎ融資にかかるコストと比べるたときに、どちらがお得になるのかしっかり確認しておくことが大切です。
ただし、分割融資を行ってくれる金融機関もたくさんあるわけではないので、分割融資を希望するなら、限られた金融機関の中から選択することになります。
③工務店に交渉
工務店への交渉次第で、着工金などの支払い時期を遅らせてもらったり、建物が完成するまで支払いを待ってもらうことができる場合もあります。
建物完成まで待ってくれるなら、つなぎ融資は不要ですし、待ってくれなかったとしても支払い時期を遅くしてもらうことで、つなぎ融資を利用した場合の利息分を減らすことが出来ますね。
あきらめず、まずは交渉してみるといいでしょう。
④資産を担保とする
もし、他に持ち家がある、土地がある、などという場合は、そのような資産を担保としてお金を借りる方法もあります。しっかりと見合うだけの担保があれば、金融機関から融資してもらうことはできるでしょう。
⑤すまいとマネープランを利用
すまいとマネープランというのは、(株)ERIソリュージョンが提供している制度になります。
制度の内容は(株)ERIソリュージョンが建物完成まで管理し、進捗状況に応じて必要な工事代金支払いを代行してくれるというものです。
このすまいとマネープランを利用すると、提携している金融機関の窓口から、着工前でも住宅ローン融資が実行されます。
工事の進み具合もチェックし出来高に応じて支払いをしてくれるので、安心ですし、つなぎ融資を利用する必要がないのでつなぎ融資にかかるコストを減らすことができます。
しかし、窓口となる金融機関が少ないため、今後長く付き合っていくことを考えると利便性の点で少し残念かもしれません。
また、住宅ローン分割融資と同じで、融資された段階から返済がスタートします。一時的に2倍の家賃支払いが必要となるでしょう。
さらに、このマネープランを利用するにあたっても手数料などがかかってくるので、つなぎ融資とどちらが低コストになるのかシッカリ検討することが大切です。
このように見ていくと、どの方法にもメリット・でメリットが存在し、結局どの方法が一番お得なのかわからなくなってきますね。
まずは、工事を請け負ってくれる工務店に相談し、交渉してみることから始めるといいでしょう。
もし支払いを待ってくれるなら一番助かりますね。
どうしても待ってもらえないようであれば、住宅ローンを検討している金融機関への相談や交渉をしてみるといいでしょう。