自己破産の手順・方法・流れ
自己破産をすると借金がなくなるということをなんとなく知っている人は多いと思います。
では、自己破産を成立させるためには誰に許可をもらえば良いのでしょうか?
自己破産が成立したら本当に借金は煙のように消えてしまうのでしょうか?
自己破産の申し立て方法、必要な書類、自己破産のメリットとデメリットなどを詳しくご紹介します。
自己破産手続きの流れ
まずは、自己破産手続きの大きな流れからご紹介します。
1.必要書類の準備・作成
必要書類は給与明細や源泉徴収票など、コピーで良いものもありますが、借金の借入先・金額・残高など細かい記入が必要なものがあります。
2.自己破産の申し立て
自己破産をする人の居住地を管轄している地方裁判所に行き、申立書と必要な費用を収めて申し立てを行います。
3.破産審尋
審尋は裁判官からの事情聴取になります。
支払いができなくなった理由、状況、借り入れ先の件数や総額、書類に記載している債権者以外のところからの借り入れはないか等を聞かれます。
自己破産を認めるということは、債権者に大きな損害を与えることになります。
そのため、「この人の自己破産を本当に認めても良いのか」ということを慎重に判断するために自己破産希望者本人から実際に話を聞くというプロセスがあるのです。
4.破産手続きの開始
審尋で特になにもなければ、破産手続きが開始されます。
今後の手続きは、財産が全くない場合と、財産が一定額以上ある場合で変わってきます。
財産がない場合は?
「同時廃止」となり、破産手続き開始と同時に終了します。
裁判所へは、あと1回足を運ぶだけでOKです。
財産がある場合は?
「管財事件」となり破産管財人の選出が行われ、財産が査定されて債権者に配当されることになります。
「予納金」を最低でも20万円、裁判所に納めなければ手続きが始まりません。
5.免責審尋
同時廃止の場合は、決定から約2か月後に借金を免責にするための審尋が行われます。
管財事件の場合は、免責審尋の場でなんらかの「免責の不許可事由(自己破産の許可を出すことができない事由)」が見つかったら、管財人と面接を行うことになります。
6.免責許可決定
免責審尋を行ってから約1週間で免責許可決定が出ます。
自己破産者情報として官報に記載されます。
7.免責許可決定の確定
法律上の免責許可決定が確定します。免責許可決定から1か月~2か月かかります。
破産手続き中は職業などが制限されてしまうのですが、免責許可決定が確定すればそういった制限も外れます。
●同時廃止の場合
弁護士・公認会計士・税理士・司法書士・後見人・保険外交員・警備員・取締役等にはなれません。
●管財事件の場合
・財産に対する管理処分権限
財産の管理処分は、破産管財人が行うことになります。
・住居移転
裁判所の許可なく居住地を離れることはできません。
・郵便物の受信
破産者あての郵便物は破産管財人に転送がかかります。
・公私法上の資格制限
弁護士・公認会計士・税理士・司法書士・後見人・保険外交員・警備員・取締役等にはなれません。
申し立てから免責の許可までにかかる期間は、3か月~6か月となります。
ここからは自己破産手続きの流れにそって、各項目を詳細に解説していきます。
必要書類を準備する
自己破産の手続きで最もやっかいな行程が、この必要書類の作成です。必要書類は全国の裁判所によって異なりますが、だいたい以下のものが必要になります。
戸籍謄本
給与明細(直近の2~3か月分)
源泉徴収票
預金通帳
賃貸の場合は賃貸契約書の写し
不動産の登記事項証明書
市民税・県民税課税証明書
車検証
自動車の査定書
保険証券
保険解約返戻金証明書
年金等の受給証明書
退職金を証明する書面
また、この他にも作成が必要な書類があります。
免責許可申立書
自己破産を申し立てるための書類です。
氏名や住所等の記入があります。
陳述書
破産する事情を記載する書類です。
現在の職業、家族構成、住居の状況(賃貸なのか持ち家なのか等)、最終学歴、職歴、結婚歴等を記入します。
また、ギャンブル歴や20万円以上の買い物歴などの記入、借金の具体的な内容、破産申立てに至った事情の記載も必要になります。
項目が多く、正確に記入する必要があるため面倒に感じるかもしれませんが、ウソの記載や漏れ・抜けがあると申告が却下されることもあります。
債権者一覧
全ての債権者を記載します。
銀行や消費者金融だけでなく、個人からの借り入れも記載が必要です。保証人になっている場合は、その旨も記入します。
すでに時効の援用が行われている借金は記載しなくても良いですが、後から問題にならないように、できるだけ詳細に記載するようにします。
ここで、あえて債権者を記載せずに隠すようなことをすると、免責されないこともあります。
しかし実際は、契約書や明細書などが残っていなくて、どの業者からいくら借りているかわからないことも多いと思います。
こういった場合は、信用情報機関に開示請求をすることで借り入れの状況を把握することができます。
資産目録
家、車、貯金などの財産を記載する書類です。
宝石や掛け軸などは評価額が10万円を超えるものを記載することになります。
宝石はともかく骨董品は価値は評価が難しいですよね。しかし、ややこしいからといって記入を省くようなことはできません。
家計の状況
自己破産の申し立てをする前月の収入と支出の内訳を記載します。
返済に追われていると細かいところまで思い出すのはなかなか難しいことと思いますが、正確に記載します。
予納金と一緒に書類を提出する
書類ができたら裁判所に提出して自己破産の申し立てを行います。その際に必要になるのが「予納金」です。
予納金の金額は、自己破産をする人の財産によって変わってきます。
財産が全くない場合は「同時廃止」という手続きになり、予納金は1万円程度です。
財産があると処分に手続きが必要になる「管財事件」となり、予納金の額も上がってしまいます。
手続きが少ない「少額管財」なら20万円(東京地裁の場合)、通常の管財事件なら50万円以上かかります。
管財事件になった場合は、少額管財として取り扱ってもらえた方が予納金が少なくなるのですが、少額管財は個人では利用できず、必ず弁護士がついていることが条件となります。
自己破産するのに50万円も?という感じですが、これらは一体何にかかる費用なのでしょうか。
予納金は管財人の人件費
管財事件になると裁判所が「破産管財人」という役職の人を選出します。
破産管財人は、破産者の財産を調べたり売却する人なのですが、この管財人に払われる報酬の財源が予納金になります。
ちなみに破産管財人に選ばれるのは弁護士さんです。
管財人は財産をお金に変えて債権者に配当するための人になるので、破産者のための人選というよりも、債権者の味方になります。
管財人の報酬を破産者が負担するのもなんだかモヤモヤするかもしれませんが、必要経費なので仕方がありません。
自己破産に必要な費用は?
自己破産をするにもお金が必要で、費用の項目は3つあります。
1.申立て手数料
裁判所で印紙を購入します。
全国どこでも1,500円程度です。
2.郵便切手代
数千円程度です。
3.予納金
上で解説したとおり、財産があるかないかで大幅に金額が変わってきます。
予納金は高額になることがあるため、必ずしも申し立てと同時に収める必要はありません。
ただし、納付しないと手続きが進まないので、できるだけ早めに収めるようにしましょう。納付が長期間遅れてしまうと、自己破産の申し立て自体が却下されることもあります。
自己破産の申し立てが終わってからの流れ
●破産の審尋(約1か月後)
書類を提出して予納金を納めてから約1か月後に破産の審尋が行われます。
破産手続きを弁護士に依頼した場合は、債務者本人が裁判所に行かずに弁護士が審尋を受けることもできます。
●破産手続き開始の決定(約1週間後)
破産の審尋から破産手続き開始の決定までは約1週間程度となります。以前は破産手続き開始の決定のことを「破産宣告」と呼んでいました。裁判所に足を運ぶ必要がありますが、同時廃止であればあまり時間はかかりません。
●免責審尋(約2か月後)
免責手続きを行うために裁判所に行きます。
●免責許可決定(約1週間後)
借金返済を免除することを裁判所が正式に許可する決定です。
このときに、官報に載ってしまうことを覚えておきましょう。
<参考>インターネット版 官報
官報は国が発行している政府・省庁等の決定事項が記載されている新聞みたいなもので、ほぼ毎日発行されています。
自己破産者と個人再生をした人は、官報に「手続きをした裁判所・手続きをした日時・破産者の名前・破産者の住所」が載ることになります。
住所まで載ってしまうのはちょっと怖い気もしますが、官報の情報は膨大なので、知り合いや会社の人が官報から自己破産者を見つける可能性はとても低いと言えます。
官報の一部はネットでも閲覧可能なのですが、直近30日分しか見ることができません。
本気で探そうと思えば、国立図書館で探す方法もありますが、その手間を考えると官報からバレる可能性は限りなく低いでしょう。
書類が無事に受理されて、申し立てを行ったらあとは裁判所からの連絡を待ち、指示に従うような形になります。
自己破産のデメリット
自己破産の目的は裁判所に免責の許可をもらうことになります。許可がでれば借金が0円になり返済の義務もなくなるわけですから、メリットは大きいですよね。
でも、自己破産にもデメリットはちゃんとあります。
本当に自己破産が最適な方法なのか見極めるためにも、デメリットを把握しておきましょう。
財産がなくなる
生活に最低限必要なものは残りますが、20万円以上の貯金は全て処分されますし、家、土地、車なども回収されてしまいます。
ブラックリスト入りする
信用情報機関に自己破産者としての登録がなされ、5年~10年程度、新たな借り入れ、クレジットカードの作成、ローンを組んでお金借りることができなくなります。
これらの制限は法的なものではないのですが、金融事故を起こしたということでブラックリスト入りしている期間は信用がなくなるため、こういった制限がかかることになります。
元々クレジットカードを持っていない場合は、そこまで気にならないかもしれませんが、クレカがないと登録できないサービスも増えているので、想像以上に不便を感じるかもしれません。
あらゆるローンが組めなくなり、お金を借りれなくなるので、スマホの分割払いもできない可能性があります。
ETCカードもクレジットカードと紐づいているので、作ることができません。
高速道路には乗れますが、料金所で大渋滞に巻き込まれることがあったり、ETC割引が使えない、スマートインターチェンジが使えないといったリスクがあります。
会社にバレる可能性もある
自己破産をしたことが裁判所などから会社に伝わることはありませんが、会社が信用調査を行えばバレてしまうこともあります。
制限される仕事に就いていたらどうなるの?
自己破産の申し立てから免責決定までは、仕事が制限されることをお話しましたが、もし制限がかかるお仕事に就いている場合は、どうなるのでしょうか。
こういった場合の扱いは、勤めている会社次第となります。
一般的には、一時退職扱いになったり、制限のかからない部署に異動になるなどの措置がとられるようです。
会社が関連してくるので、自己破産を申し立てたことが会社に知られてしまうことになります。
また、自己破産者が就けない仕事はないのですが、信用が大切な業種は自己破産者を雇用しない方針のところもあります。
債務が移る
連帯保証人がいる場合は、債務が連帯保証人に移ってしまいます。
債務者がAさん、連帯保証人がBさんだとします。
Aさんが自己破産をして免責許可が出たことで、Aさんの支払い義務はなくなりますが、連帯保証人がいる場合は、債務が保証人に移ってしまうので、今度はBさんに催促がいきます。
債務者を信用して判子を押してくれた善意を裏切ることになりますし、連帯保証人にとっても辛いことですが、こういった役割を担うのが連帯保証人ということを覚えておかないといけないですね。
官報に載る
上で解説したとおり、自己破産が決定すると官報に掲載されます。
免責が決定するまでは制限がかかる
こちらも上でご紹介したとおり、自己破産の申し立てを行うと免責が決定するまで仕事や生活に制限がかかってしまいます。
自己破産のデメリットを挙げてみましたが、それでも自己破産を行った方が良いのか、他の債務整理の方が良いのか迷うこともあると思います。そういったときは弁護士などの専門家に相談する方法があります。
自己破産は弁護士に依頼するべき?
自己破産の手続きを自分で行う場合は、書類も全て自分で用意・作成する必要があります。
また、必要書類に不備があったり裁判所・債権者とのやりとりで問題があると手続きがうまくいかないこともあります。
弁護士に依頼すると書類は全て弁護士の方で準備してもらえるので、かなり労力を減らすことができます。
また、何よりも法の専門家ですから、複雑な事情や価値がよくわからない財産がある場合などの不透明な部分を短期間でクリアにすることができるでしょう。
弁護士に依頼することを躊躇してしまういちばんの材料は費用ですよね。自己破産に必要な弁護士費用の相場は20万円~50万円と言われています。
この金額を支払ってでも弁護士に依頼するメリットとしては、
・取り立てが即止まる
自己破産の手続きを始めると弁護士が各債務者に受任通知(介入通知)を送付します。これを受け取った債権者は、債務者に直接取り立てることができなくなるので、自己破産の決定が出る前から督促が止まることになります。
・最小限の手間で手続きができる
書類にほんの少しでも不備があると受理してもらえませんし、各債権者への連絡も自分で行う必要があります。弁護士に依頼するとこういった難易度の高い手続きも全て行ってもらえます。
・少額管財の申し立てができる
管財事件の中でも予納金が少なくなる少額管財は、申し立て人の代理人に弁護士がついていることが要件となっています。
申し立てを行う前段階である程度の調査を終わらせて、その後の裁判所の手続きを迅速に行うことが少額管財の狙いのひとつなので、必ず弁護士が必要なのです。
少額管財が適用されない本人申し立てを行った場合、予納金が高くなってしまうこともあるので、結果的に弁護士に依頼した方が安くなることもあります。
ただし、家は賃貸物件で車もなく、財産・資産と言えるものがまったくない状態の場合は同時廃止になり予納金は15,000円程度なので、弁護士費用が高く感じられるかもしれませんね。
同時廃止になることが考えらえる場合は、少額管財のメリットはなくなりますが、それでも弁護士に依頼する意味は十分にあります。
弁護士に自己破産手続きを頼みたいけどお金がないときは?
弁護士費用と予納金は、裁判所と弁護士事務所によっては分割払いが可能となるので、相談してみて下さい。
また、弁護士にあてが無い場合は、費用の相談も兼ねてまずは無料で相談できる法テラスを頼ってみてはいかがでしょうか。
まず何をすれば良いのかがわからないときにも有効ですし、弁護士費用や着手金の立て替えも行っています。
<参考>法テラス